『詩のこころを読む』茨木のり子

残念ながら、わたしにはまだまだ詩のこころを読む力がないらしい。
 
岩波ジュニア新書として刊行されている本だけれど、子どもにはかなりむずかしい本なのではないかという印象を受けた。20歳前後の若者にはどうだろう?茨木さんや、さまざまな詩人たちのメッセージはきちんとこころに届くだろうか?
 
40代のわたしが読んで、なんとか理解できたのが5割程度。この本は茨木のり子さんが53歳のときに出版されているので、わたしもあと10年生きれば、残りの5割を理解できるのだろうか?
 
この本に登場する詩の中で、わたしがいちばんこころを揺さぶられたのが、会田綱雄さんの『伝説』だった。とても有名な詩ということで、わたしも以前に目にしたことがあるように思う。なぜなら。
 
「蟹を食う人もあるのだ」
        
  (詩集『鹹湖』より 会田綱雄『伝説』から一部抜粋)
 
という一文が、妙に引っかかって、記憶の片隅に残っていたからだ。
 
会田綱雄さんは南京大虐殺の数年後に中国に渡られ、そのときの体験をもとに、この詩を書かれたそうである。中国では「蟹は亡くなった人の肉を食べるので、戦争の起きた年の蟹はたいそうおいしい」という言い伝えがあり、会田さんが出会った中国人はまったく蟹を口にしなかったらしい。
 
このような背景を知ると、「蟹を食う人もあるのだ」ということばが妙にこころに引っかかっていたことに納得する。この一文は、とんでもなく多くの複雑な感情をはらんでいたのだ。
 
再度、背景も含めて、『伝説』を読み直すと、さらに人間の生と死を深く感じさせる。人生そのものを一編の詩にまとめあげた描写も、本当にすばらしいと思う。
 
そして、この詩の最後に書かれている“夫婦のむつびあい”。

むつびあうとは「互いに仲良くすること」という意味だが、ものすごく奥ゆかしい響きで、こんなに美しい夫婦の営みの表現を見たのは、はじめて。いやらしさをまったく感じさせず、むしろ尊ささえも感じるのは、そこに人間の生がしっかりと存在しているからなのだろう。
 
さきほど、5割しか理解できなかったと書いたけれど、たとえ5割でも、こころを揺さぶられる詩に出会えたことは、とても幸せでした。
 
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谷川俊太郎さんの『芝生』にも、かなりこころを揺さぶられましたが、この詩はこころにストンと落ちそうで、まだ落ちきっていないのです。
人物名などあと少しで思い出せそうなのに思い出せないときの、あの感覚です。
 
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
手嶌ゆり子でした。